当プレスルームのインバウンド・カテゴリでは、以前「今後インバウンド需要の高まりが期待される業種3選」の中で医療機関(病院)を取り上げています。大勢の人が訪れる場所にケガや病気はつきもの。今後さらに増加が見込まれるインバウンド(訪日外国人)を医療機関が受け入れるためにはどのような課題があるでしょうか。対策案と一緒に見てみましょう。
課題1:ニーズの予測が難しい
大都市や有名観光地の医療機関であれば外国人旅行者のニーズは予想しやすいかもしれません。しかし、これから外国人を誘致しようとする地域をはじめ、サッカーやラグビーのワールドカップ、オリンピックなど、一過性の大規模イベントでは予測の難易度が格段に上がってしまいます。
現時点では地域や医療機関ごとのデータをまとめて確認できるサービスは存在しないため、必要な情報を個別に調査・収集する必要があります。的確にニーズを予測するためには行政、医療機関などが連携してデータを蓄積し、共有化を図ることが求められるでしょう。不定期のイベントでは主催者からの情報収集も欠かせません。
課題2:インバウンドとのコミュニケーション
円滑なコミュニケーションは外国人受け入れの最重要課題のひとつです。医療機関では受診者の体調やケガの状態などを正確に把握する必要があるため、専門的な知識を有した外国語話者の育成には通常よりも時間がかかります。この課題に迅速に対応するには次の方法が考えられます。
ひとつは、東京都の「医療機関向け救急通訳サービス」(※1)や、愛知県の「あいち医療通訳システム」(※2)など公的サービスの活用です。また、最近は診察室や手術室などの禁止エリアを除いてスマートフォンが利用できる医療機関も多いので、「UrDoc(ユアドク)」(※3)などのアプリを併用することで、よりスムーズなコミュニケーションが可能になります。
課題3:コストの負担が大きい
人件費や設備投資を伴うことを新たに始めようとするときにはコストについても考慮しなければなりません。前述のとおりニーズが不明確な場合は予算を組む上でもネックになります。この課題を解決するためには、たとえば「東京都外国人患者受入れ体制整備支援事業」(※4)のような、補助金が交付される制度に応募する方法があります。
コストの面では、総額約9,300万円にものぼる医療費の未払い(2018年 ※5)への対応も急務です。現状では個別の医療機関単位で、旅行保険、クレジットカード、現金などを事前確認する以外に有効な方法がありません。インバウンドに治療費として請求できる金額の見直しや出入国管理の厳格化といった制度上の改善が強く求められます。
まとめ
観光を成長戦略の柱に含め続ける限り医療機関を受診するインバウンドがさらに増えることは自明の理と言えます。的確に課題を把握して上手に対策することで、医療におけるインバウンド消費を取り込めるのではないでしょうか。
※1:東京都福祉保健局 医療機関向け救急通訳サービス
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/iryo_hoken/gaikokujin/kyukyutsuyaku.html
※2:あいち医療通訳システム推進協議会 あいち医療通訳システム
http://www.aichi-iryou-tsuyaku-system.com/
注記:県内に住む外国人の方が対象ですが、インバウンドの利用を制限する項目はありません。
※3:日本初、多言語医療相談アプリ UrDoc(ユアドク)
https://www.ur-doc.com/ja/
※4:東京都福祉保健局 東京都外国人患者受入れ体制整備支援事業
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/iryo_hoken/gaikokujin/taiseiseibi.html
※5参照:産経ニュース 外国人の医療費未払い 病院の約2割が経験 総額9300万円
https://www.sankei.com/life/news/190327/lif1903270027-n1.html
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ライタープロフィール
萩野康史:難しい話題でも平易な文章で分かりやすく紹介すことを心がけています。ビジネス関連の記事と並行してアートや旅についても執筆中。ライターとして生計を立てることは子供のころからの夢でした。
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